第五十八回グランパ句会 二〇〇四年十一月八日(月)
      兼題「風」

1 旅人となりし五十路や初時雨
2 月美草ゆっくりさいてなくこころ
3 蜥蜴(とかげ)の尾生臭き風草燃ゆる
4 刈田(かりた)かな農婦のひとり道をゆく
5 台風(かぜ)さりて盥(たらい)は唄う時雨かな
6 暗闇で風が知らせる金木犀
7 落胆の恩師に見せたい金木犀
8 同類の風とぶつかり笑いあい
9 濁り酒ほとほとほとほと風媒花
10 今日を積み重ねて生きる風トンボ
11 カサカサと音と歩みて秋の山
12 がんばれるがんばれるんだ冬に入る
13 紅葉の輝く空や京の坂
14 いつまでもススキ手を振るふりかえる
15 化粧してひな手まりなど膝に抱く
16 秋時雨友の電話をフイに切る
17 海は火を燃えて無名の露しづく
18 一滴の血が銀漢を真紅にし
19 天空の風舞い降りて石蕗(ふき)の花
20 あつまってとばそうじゃないか竹とんぼ
21 台風の前に自転車倒しなさい
22 電停に佇む(たたずむ)空の高さかな
23 実らせて大風(のわけ)見返すおはぎ餅
24 名月を見上げて眠る棚田かな
25 北風に曝す(さらす)ものも持ち合わせぬ
26 秋がきたふんわり歩く風の中
27 秋風や弔辞のように鳥の足
28 皿倉のにわかに近く秋開く
29 シャンソンにグラス傾け秋日かな
30 菊香る今なき父の花鋏(はなばさみ)
31 笑っては夕日に染まる子供達
32 どうしたか元気を出せと夫の秋
33 台風があとからあとから数珠(じゅず)のようだ
34 客去りて紅葉みあげるピエロ哉
35 息づまる過去も未来も風の花
36 決心は良くも悪くも柊(ひいらぎ)の花
37 ひとりにて冷やかな風肌にしみる
38 風当たり強くなりたる三十路前
39 異国にて死せる者あり愁思かな
40 山近し大棟(むね)に跨り(またがり)風を見る
41 野良猫も動き隠せぬ月明かり
42 凍て付いた追憶の風流転する
43 風寒し二人のあいだ狭(せば)めよう
44 大花野になるまで風を考える
45 影よぎり振り向き見れば秋の風
46 災害の里の空にものちの月
47 主婦にならず独身の初冬哉
48 秋の風胸吹きぬけて空に舞う
49 ススキの中うずもれている心かな
50 万華鏡にのみこまれる風邪のひる
51 寄りかかるものなき秋の綱渡り
52 子の声か咽び、笑いし千の風
53 綿入れにあの子の思い包み込む
54 越年の残り香消さず模様替え